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事故

2015年7月26日1059JST、訓練飛行を終了し調布へ帰投。

調布FSから “Continue approach runway 17” のInformationを貰いApproachを継続し、離陸準備中の機がTakeoff runを開始したのと殆ど同時に”Runway is clear” となりShort field landing で着陸しました。Landing roll中、Runway 17延長線上から約10度左・距離約500メートルの方向から黒煙が上がるのが見えました。

まさか、つい何十秒前かに離陸した飛行機が墜落したなんて思いもしないので通常通りRamp inし、整備士に「火事?」と聞いたところ「マリブが墜ちました」とのことで仰天しました。事故機から無線による通信は一切ありませんでした。

事務所へ帰って少し詳しい事が解ってきました。当該機はPiper 製Malibu JA4060号機で5名乗っていたということでした。調布飛行場のRunway 17の直線上は運動公園等があり子供や市民の憩いの場ですが、黒煙が上がっている方向は公園より左(東)にズレ民家のある方向なのでとても心配になってきました。

Malibuの操縦経験者によると単発軽飛行機としては高級機でとても人気のある飛行機ですが、離着陸が難しいとのことです。またW & Bにも気を使うとも。

Catalogueによる性能では、最大離陸重量でのTakeoff run(50ft超え)が2550FTと記載されています。当然、ISAでの性能でしょうから、外気温度30数度の夏場なら更にTakeoff runは必要となり、調布(800m)からの離陸はMax takeoff weightから重量を減らさないと無理だと推測できます。

私の50年の飛行経験でも、目の前で飛行機事故に遭遇したのは初めてでショックです。3名の方が亡くなられましたがご冥福を祈る以外に手立てはありません。

調布から南への離陸直後、Engine failureになれば単発機は前方(住宅街)への不時着しか手段はありません。仲間といつも『どうする?』と会話を交わしますが、良い解決策はなく、地上への被害を最小限にするように『墜とす!』しかありません。今回の事故報道で過去の小型機墜落事故で「校庭」に不時着しているCaseがありますが、Pilotが意図的に校庭に不時着させたのです。

受け持ちの事業用課程の学生(Cessna 172S)には、Engine故障時高度が500ftあれば飛行場へ帰れ、
 ●機種を下げ(勇気がいる)、滑空速度(68kt)を維持しながら
 ●直ちにBank45度(もっと勇気がいる)で風上側へ旋回し、『"飛行場内” へ降りろ』

と教えています。躊躇する時間はゼロとも。

180度旋回すると、Bank45度でAlt lossは200ftですが30度なら300ftです。

空港へ帰るには200度以上の旋回がいるので飛行場へ機首が向いた時の高度は100~200ftしかないと思われます。滑走路に届かなくても住宅街等へ降りるよりは遥かに・遥かに上策です。

Wind calm時 "Which runway do you use? " と聞かれれば何も考えず "Runway 35" です。調布飛行場の北側は公園や、霊園があり不時着場はあるので。

(お見舞いの言葉を頂いた方々にお礼を申し上げます。)

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コメント 3

皮算用

時々拝見してます。

報道では、当該機は、最大離陸重量より少し軽いだけだった・・・とされていますが、800mの滑走路では、離陸が無理が積載重量だったという事でしょうか
by 皮算用 (2015-07-30 22:54) 

Oldfogy

私は、Malibu の POH (Pilot's Operating Hand, AirlineのFCOM=Flight Crew Operating Manual に相当します)を持っていません。

事故機の正確な離陸重量が解らないので離陸が無理であったかどうかについては『解りません』としか言えません。

POHには、機体の制限、Normal & Abnormal の手順、性能(表)、積載要領、機体のバランス(W & B)等が書かれており、POHを和訳したものを航空局からAFM(Aircraft Flight Manual)として承認を受けます。

定期航空のAFMは英語でも構わないのですが、使用事業は必ず日本語でなければなりません。私は、AFMを見ないで専らPOHを使用しています。和訳だと微妙な「感覚のズレ」があります。

投稿に書いたように、Malibuの最大離陸重量での離陸距離は2,550ftなので、当日の気象データからは『調布飛行場(800m) から最大離陸重量での離陸は困難か?』ではないかと思います。

一般的には、W&B で許容される離陸可能重量を超えてPilotが機を運航させることはあり得ません → 離陸できないので!

当該 Malibu の離陸を(私の機の出迎えのためRampに居て)見ていた整備士によると『滑走路ギリギリで上がりました。しかし、Malibu はいつもギリギリなので余り気にしなかったのですが、離陸後高度が取れませんでした』と言っています。

私が乗っているCessna 172Sの離陸距離(50ft超え)は約500mですので余裕はあるのですが、調布等800mクラスの滑走路から離陸する時は緊張しますね。

まず、滑走路に入る時に、滑走路端一杯になるようにTaxi し Align させます。

Normal takeoff (Engine RPM を1,500rpm にし、Engine normalを確認しBrake release and full powerにセット)ではなく、Short field takeoff (Takeoff run 開始前に Full power にし、Engine check normal, then brake release)で上がります。

Rotation 後、Pitch(機体の角度) 12.5度(Vx climb, 最大上昇角度) を維持し対地200 ftまで上昇、Pitch 7.5度にし (Vy clim, 最大上昇率)Speedを確認しFlap up, 対地500を超えるとホットします。

使用事業の場合は離陸滑走開始からRotation し、高度50ftに上昇するまでを離陸距離とし、この数値が滑走路の長さの中に入っていれば離陸可能です。

Airlineでは、ごく簡単に言えば V1でOne Engineが故障し、離陸を中止し、機が停止するまでの距離(Accelerate stop distance)で離陸が決定されます。
by Oldfogy (2015-07-31 09:32) 

皮算用

詳細な説明、ありがとうございます。
172で緊張するような滑走路長さで、「ほぼ」離陸重量の上限値。
そのことの意味がよくわかりました。

報道で言われている「エンジン音が低音」が、気になる所です
by 皮算用 (2015-07-31 12:37) 

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